第一項では、債権の目的物が種類(例えば、「〇〇産の米10キログラム」や「△△社製のパソコン1台」など)によってのみ指定され、契約内容や当事者の合意によってその具体的な品質を定めることができない場合、債務者は中程度の品質を有する物を給付する義務を負うと定めています。


これは、あまりにも粗悪なものを給付することを防ぎ、一定の公平性を保つための規定と言えます。



第二項では、第一項の場合において、以下のいずれかの時点が到来すると、その種類で指定されていた物が、特定の物として債権の目的物になると定めています。

  • 債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了したとき: 例えば、米10キログラムを袋に詰め、債権者に引き渡せる状態にした場合などです。
  • 債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したとき: 例えば、債務者が複数の米の袋の中からどれを給付するか債権者に選んでもらい、債権者がそれを承諾した場合などです。


このように目的物が特定されると、以後はその特定の物について、第四百条の保存義務などが適用されることになります。


また、その特定の物が債務者の責めに帰すべからざる事由によって滅失・毀損した場合には、債務者は原則として履行責任を免れることになります(債務不履行責任は問われなくなります)。


この条文は、種類債権における債務者の負担を公平にし、取引の安定を図る上で重要な役割を果たしています。