第一項では、選択権は、その権利を持つ者(原則として債務者)が、相手方(原則として債権者)に対して意思表示をすることによって行使すると定めています。

この意思表示によって、数個あった給付の中から一つが確定し、債権の内容が特定されます。
特別な方式は要求されておらず、口頭、書面などいずれの方法でも有効です。
ただし、後々の紛争を避けるためには、書面で行うことが望ましいと言えます。


第二項では、いったん行われた選択の意思表示は、原則として相手方の承諾を得なければ撤回することができないと定めています。
これは、相手方の法的地位を安定させるための規定です。
選択が行われると、相手方はその選択された給付を前提として行動することが考えられるため、一方的な撤回を認めると相手方に不測の損害を与える可能性があります。


例えば、売買契約において、売主(債務者)が「Aという絵画またはBという彫刻を引き渡す」という選択権を持っており、買主(債権者)に対して「Aの絵画を引き渡します」と意思表示した場合、原則として買主の承諾なしに「やっぱりBの彫刻にします」と撤回することはできません。もし撤回したい場合は、買主の同意を得る必要があります。


この条文は、選択債権における権利行使のタイミングと、その効果の安定性を確保する上で重要な役割を果たしています。