この条文は、以下の要件が満たされた場合に、本来選択権を持っていた当事者から、相手方へと選択権が移転することを定めています。
- 債権が弁済期にあること: 選択をするべき時期が到来していることが前提となります。
- 相手方から相当の期間を定めて催告があったこと: 選択権を持たない当事者(例えば、債権者に選択権がある場合は債務者、債務者に選択権がある場合は債権者)が、選択権を持つ当事者に対して、いつまでに選択をするようにと催告する必要があります。この際、相手方は「相当の期間」を定める必要があります。相当の期間とは、具体的な状況によって判断されますが、選択に必要な合理的な期間を指します。
- 選択権を有する当事者がその期間内に選択をしなかったこと: 催告を受けたにもかかわらず、定められた期間内に選択を行わなかった場合、選択権は催告をした相手方に移転します。
選択権が相手方に移転すると、今度は相手方が数個の給付の中から一つを選択し、債権の内容を確定させることができます。
例えば、売買契約において、売主(債務者)が「Aという絵画またはBという彫刻を引き渡す」という選択権を持っており、弁済期が到来したにもかかわらずなかなか選択をしないとします。
そこで、買主(債権者)が売主に対して「1週間以内にどちらの絵画または彫刻を引き渡すか選択してください」と催告したにもかかわらず、売主が1週間以内に選択をしなかった場合、その選択権は買主に移転し、買主は売主に対してどちらの給付を求めるかを指定することができます。
この規定は、選択債権において、選択権を持つ当事者がいつまでも選択をしないことによって、債権関係が不安定な状態に置かれるのを防ぎ、迅速な権利実現を図るためのものです。
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