第一項では、第三者が選択をすべき場合、その第三者は、債権者または債務者のいずれか一方に対して意思表示をすることによって選択を行うと定めています。
どちらに意思表示をすべきかは、契約の内容や状況によって解釈されますが、一般的には、その選択の結果によって直接的な影響を受ける当事者(例えば、給付を受ける側)にすることが多いと考えられます。



第二項では、第三者が選択をすることができない場合(例えば、死亡、意思能力の喪失など)や、選択をする意思を有しない場合(例えば、選択を拒否する場合など)には、その選択権は債務者に移転すると定めています。
これは、いつまでも選択がなされず、債権関係が確定しない状態を避けるための規定です。

債務者に選択権が移転すれば、債務者が自ら選択を行い、債務を履行することで債権関係が解消に向かうことが期待できます。


例えば、遺贈のケースで考えてみましょう。
「甲の所有する絵画、陶器、または彫刻のうち、乙が選んだものを丙に遺贈する」という遺言があったとします。

  • 第一項の場合: 乙(第三者)が「絵画を選びます」という意思表示を、遺言執行者(債務者の立場に近い)または受遺者丙(債権者の立場に近い)のいずれかに行うことで、遺贈の目的物が確定します。
  • 第二項の場合: もし乙が死亡して選択できなくなった場合や、乙が選択することを拒否した場合、選択権は遺言執行者(債務者の立場に近い)に移転し、遺言執行者が絵画、陶器、彫刻の中から一つを選んで丙に引き渡すことになります。


このように、第四百九条は、第三者が選択権を持つ場合に、その行使方法と、選択が不可能または拒否された場合の選択権の帰属を定めることで、円滑な債権関係の実現を図っています。