この条文は、債務の履行が不可能になった場合の債権者の権利について定めています。


第412条の二第1項は、債務の履行が、契約の内容や取引社会における一般的な考え方から見て、客観的に不可能である場合、債権者はその履行を請求できないと定めています。


ここでいう「不能」とは、単に債務者にとって履行が困難であるという主観的な意味ではなく、誰が履行しようとしてももはや実現できないという客観的な不能を指します。
例えば、売買契約の対象である物が既に滅失してしまった場合などがこれに当たります。


第412条の二第2項は、契約成立の時点で既に債務の履行が不可能であった場合でも、債権者は、その履行不能によって生じた損害について、民法第415条に基づいて賠償を請求できるとしています。

これは、契約締結時に債務が履行不能であったにもかかわらず契約が成立した場合、債権者は本来得られたはずの利益を失うなどの損害を被る可能性があるため、債務者に対して損害賠償を請求する権利を認めたものです。




具体例を挙げると、

  • 第1項の例: 中古車を売買する契約を結んだものの、契約前にその車が事故で完全に壊れてしまっていた場合、買主はその車の引渡しを請求することはできません。

  • 第2項の例: ある絵画を売買する契約を結んだところ、契約締結時には既にその絵画が盗難に遭い現存していなかった場合、買主は絵画の引渡しを請求できませんが、契約が無効になるだけでなく、もし損害(例えば、その絵画を転売して利益を得る機会を失ったなど)があれば、売主に対してその損害の賠償を請求できる可能性があります。



この条文は、契約の効力や債務不履行責任を考える上で重要なポイントとなります。
特に、契約締結時と履行時の状況の変化によって、債権者の権利がどのように変わるのかを理解する上で役立ちます。