この条文は、債権者が債務の履行を受け取らない、または受け取ることができない場合の、債務者の義務や費用の負担について定めています。



第413条第1項は、債務の目的が特定物の引渡しである場合に、債権者が履行を拒否したり、受け取ることができなかったりするとき、債務者は履行の提供をした時点から、その物を自分の財産に対するのと同じ程度の注意義務(自己の財産に対するのと同一の注意)をもって保存すれば足りると定めています。

これは、債務者に過度な負担を強いることを避けるための規定です。
本来であれば、債務者は善良な管理者の注意義務(善管注意義務)をもって物を保管する義務を負いますが、債権者の都合で履行が遅れている状況においては、そこまで高い注意義務を課す必要はないと考えられます。



第413条第2項は、債権者が履行を拒否したり、受け取ることができなかったりすることによって、履行に必要な費用が増加した場合、その増加した費用は債権者が負担すると定めています。

例えば、特定の商品を引き渡そうとしたのに債権者が受け取らず、その商品を倉庫に保管する必要が生じ、保管費用が発生した場合、その保管費用は債権者が負担することになります。
これは、債権者の都合によって債務者に余計な費用が発生したのだから、その費用は債権者が負うべきだという公平の観点に基づいています。



具体例を挙げると、

  • 第1項の例: 陶芸家が注文された一点物の花瓶を完成させ、買主に引き渡そうとしたところ、買主が一方的に受け取りを拒否した場合、陶芸家はその後、その花瓶を自分の他の作品と同じように丁寧に保管すれば、それ以上の特別な注意義務は負いません。

  • 第2項の例: 家具の配送業者が、注文されたソファを買主の自宅に届けようとしたが、買主が不在で受け取れず、一旦会社に持ち帰って保管し、後日改めて配送する必要が生じた場合、再配送にかかる費用や保管費用などの増加額は買主が負担することになります。



この条文は、債権者の協力なしには債務の履行が完了しない場合に、債務者を保護し、公平な責任分担を図るための規定と言えるでしょう。