この条文は、債務者が任意に債務を履行しない場合に、債権者がどのような手段を取ることができるのかを定めています。



第414条第1項は、債務者が自分の意思で債務を履行しないとき、債権者は民事執行法その他の強制執行の手続に関する法令に従って、裁判所に履行の強制を請求できると定めています。
そして、その具体的な方法として、直接強制、代替執行、間接強制などが挙げられています。

ただし、債務の性質がこれを許さないときは、履行の強制を請求することはできません。
これは、例えば、高度な芸術作品の制作のように、債務者の個性や能力が不可欠な債務の場合、強制的に履行させることが適切ではないと考えられるためです。
いわゆる作為義務の中でも、代替性のないものなどがこれに該当します。


  • 直接強制: 債務者の財産に対して直接的に行われる強制執行で、金銭債務の強制執行などがこれに当たります。例えば、債務者の預貯金や給与を差し押さえて、債権者に支払わせる方法です。

  • 代替執行: 債務者が行うべき行為を、債務者に代わって第三者が行い、その費用を債務者に負担させる強制執行です。例えば、土地の明渡し義務を債務者が履行しない場合に、裁判所の許可を得て債権者が第三者に明渡し作業をさせ、その費用を債務者に請求する方法です。

  • 間接強制: 債務者が義務を履行しない場合に、履行するまでの間、債務者に対して金銭的な制裁(例えば、履行遅延金)を課すことによって、心理的に履行を促す方法です。




第414条第2項
は、債務者が任意に債務を履行しない場合、債権者は上記の履行の強制を請求することに加えて、またはそれに代えて、損害賠償の請求をすることを妨げないと定めています。

つまり、債務不履行によって債権者に損害が発生した場合、債権者は履行の強制を求めるだけでなく、その損害を賠償してもらうこともできるということです。




具体例を挙げると、

  • 履行の強制の例:

    • 金銭の貸し借りで、期日になってもお金を返済しない債務者に対して、債権者は裁判所に強制執行を申し立て、債務者の預貯金を差し押さえることができます(直接強制)。
    • 建物を取り壊す義務がある債務者がそれをしない場合、債権者は裁判所に代替執行を申し立て、第三者に建物を壊してもらい、その費用を債務者に請求できます(代替執行)。
    • ある行為をしない義務(例えば、競業避止義務)を負っている債務者がそれに違反した場合、債権者は裁判所に間接強制を申し立て、違反行為1日につき〇〇円というように制裁金を課すことで、義務の履行を促すことができます(間接強制)。
  • 損害賠償請求の例:

    • 約束の期日に商品が納品されなかったために、債権者が事業で損害を被った場合、債権者は商品の引渡しを強制するだけでなく、その損害の賠償を請求することができます。



この条文は、債権者の権利実現のための重要な手段を定めており、債務者に対して債務の履行を促す効果を持つとともに、債権者の損害を填補する道を開くものです。