この条文は、将来において得られるはずだった利益や、将来において負担するはずだった費用についての損害賠償額を算定する際の、利息相当額の控除に関する規定です。



第417条の二第1項は、将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合に、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これを行うと定めています。



これは、将来得られるはずだった利益を現在の時点で賠償する場合、その期間分の利息相当額を差し引くことで、現在価値に換算するという考え方に基づいています。

例えば、本来であれば5年後に100万円の利益を得られるはずだったのに、債務不履行によってそれが得られなくなった場合、現在の時点で100万円を受け取るのは、5年間の利息分だけ債権者が有利になるため、その利息相当額を控除して賠償額を決定します。
この計算に用いる利率は、損害賠償請求権が発生した時点の法定利率となります。



第417条の二第2項は、将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合に、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とすると定めています。

これは、将来支払うはずだった費用を現在の時点で賠償する場合にも、同様にその期間分の利息相当額を控除するという考え方です。

例えば、将来必要となる治療費を債務不履行によって前倒しで賠償する場合、将来の時点までの利息相当額を差し引いた金額が賠償額となります。
こちらも、控除に用いる利率は損害賠償請求権が発生した時点の法定利率です。



この条文は、将来の金銭的な損害を現在時点で賠償する際の公平性を確保するために設けられました。時間的価値を考慮し、債権者が不当に利益を得たり、不当に不利益を被ったりすることを防ぐ役割を果たします。


具体例を挙げると、

  • 将来の利益の賠償: 交通事故で後遺症が残り、将来にわたって得られるはずだった収入(逸失利益)を賠償する場合、将来の収入を現在の価値に換算するために、逸失利益が発生するまでの期間の利息相当額が控除されます。この際の利率は、事故発生時の法定利率が用いられます。

  • 将来の費用の賠償: 医療過誤によって将来的に継続的な治療が必要になった場合、その将来の治療費を現在賠償する際に、治療が必要となるまでの期間の利息相当額が控除されます。この場合の利率も、損害賠償請求権が発生した時点(一般的には医療過誤が明らかになった時点)の法定利率が用いられます。



この条文を理解する上で重要なのは、損害賠償請求権が発生した時点の法定利率を用いるという点と、将来の金銭的価値を現在価値に換算するという考え方です。