この条文は、債務不履行やそれによる損害の発生・拡大について、債権者にも過失があった場合の損害賠償の責任と金額の決定について定めています。いわゆる過失相殺に関する規定です。



第四百十八条は、「債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める」と規定しています。



この条文のポイントは以下のとおりです。

  • 債権者の過失: 債務不履行があっただけでなく、その債務不履行によって損害が発生したり、損害が拡大したりするについて、債権者自身にも注意を怠ったなどの過失があった場合を指します。

  • 裁判所の考慮: 債権者に過失があった場合、裁判所は、その過失の程度を考慮して、債務者の損害賠償責任の有無や範囲、そして賠償額を決定することになります。

  • 公平の原則: これは、損害の公平な分担を図るという考え方に基づいています。債務者だけでなく、債権者にも損害の発生や拡大について責任がある場合には、債務者だけが全額を賠償するのは公平ではないと考えられるためです。



具体例を挙げると、

  • 損害の発生に関して債権者に過失があった場合:

    • 注文した商品に軽微な欠陥があったものの、債権者がそれを放置して使用し続けたために、欠陥が拡大して大きな損害が発生した場合、その損害の拡大について債権者にも過失があったと認められる可能性があります。この場合、裁判所は債権者の過失の程度を考慮して、債務者の賠償額を減額することがあります。
  • 損害の拡大に関して債権者に過失があった場合:

    • 債務者が約束の期日に商品の納品を遅延したため、債権者は代替品を容易に購入できたにもかかわらずそれを怠り、結果的に事業に大きな損害が生じた場合、損害の拡大について債権者にも過失があったと評価されることがあります。この場合も、裁判所は債権者の過失を考慮して、債務者の賠償額を減額する可能性があります。



過失相殺の適用にあたっては、債権者の過失の有無、その程度、そして債務不履行との因果関係などが総合的に判断されます。
裁判所は、具体的な状況に応じて、公平な損害賠償額を決定することになります。