この条文は、前条(第420条)の賠償額の予定に関する規定が、金銭以外の物で損害賠償を行うことをあらかじめ予定した場合にも適用されることを定めています。
第四百二十一条は、「前条の規定は、当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合について準用する」と規定しています。
これは、契約当事者が、債務不履行があった場合の損害賠償の方法として、金銭の支払いではなく、特定の物の引き渡しや権利の移転などをあらかじめ合意していた場合にも、民法第420条の規定が類推適用されるということです。
具体的にどのような規定が準用されるかというと、主に以下の点が考えられます。
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損害賠償額の予定の有効性: 金銭以外の物による損害賠償の予定も、原則として有効であると認められます。
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履行請求や解除権の行使との関係: 金銭賠償の場合と同様に、金銭以外の物による賠償の予定があったとしても、債権者は債務者に対して本来の債務の履行を請求したり、契約を解除したりすることを妨げられません。
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違約金の推定の類推: 例えば、「〇〇という物を違約金として引き渡す」という合意があった場合、それが損害賠償の予定と推定される可能性があります。ただし、「違約金」という文言が金銭を前提としているため、この点の類推適用は解釈の余地があるかもしれません。重要なのは、その合意が債務不履行に対する損害賠償の手段として定められたと評価できるかどうかです。
具体例を挙げると、
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金銭でない損害賠償の予定の例:
- 美術品の売買契約で、「売主が期日までに美術品を引き渡さない場合、売主は買主に対して、代わりに売主が所有する別の美術品(△△という作品)を引き渡す」という条項を設けることができます。これは、金銭ではない物を損害賠償に充てる旨を予定した例と言えます。
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履行請求との関係:
- 上記の例で、売主が約束の美術品を引き渡さない場合、買主は代替の美術品の引渡しを請求する代わりに、当初の美術品の引渡しを裁判所に求めることもできます。
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解除権の行使との関係:
- あるサービスの提供契約で、「サービス提供者が契約内容と異なるサービスを提供した場合、提供者は依頼者に対して、別の同種のサービスを無償で提供する」という条項がある場合、依頼者は契約を解除し、かつ無償での再提供を求めることができます(再提供が損害賠償に当たる場合)。
この条文は、損害賠償の方法は金銭に限定されるものではなく、当事者の合意によって多様な形態を取りうることを示唆しています。
ただし、金銭賠償の場合と比べて、その物の価値の評価や履行の方法など、特有の問題が生じる可能性もあります。
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