債権者代位権が行使された後でも、債務者や相手方がどのような行動をとることができるのかを定めた条文です。



この条文のポイントは、債権者が債権者代位権を行使した後でも、原則として、債務者はその権利を自分で管理・処分でき、相手方も債務者に履行することができるということです。


具体的に見ていきましょう。

  • 債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。
    • これは、債権者が債務者の代わりに第三者(相手方)に対して権利を行使し始めたとしても、債務者自身がその権利について、自分で取り立てたり(例えば、第三者に直接支払いを求めたり)、譲渡したり、放棄したりといった処分行為をすることを妨げられないという意味です。債権者代位権の行使は、あくまで債権者の債権保全のための手段であり、債務者自身の権利の処分権を全面的に奪うものではないと考えられています。
  • この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。
    • そして、債務者が自分で取り立てなどを行うことができる以上、第三者(相手方)も、債権者に対してではなく、債務者に対して直接支払いや引渡しなどの履行をすることを妨げられません。相手方としては、債務者との本来の関係に基づいて行動することができるということです。



この条文の趣旨は、債権者代位権の行使が、債務者と相手方との間の法律関係に不必要に介入することを避けることにあります。
債権者代位権は、あくまで債務者が積極的に権利行使をしない場合に、債権者の債権を保全するために認められた例外的な手段と位置づけられています。

ただし、注意すべき点もあります。
もし債権者が債権者代位権に基づいて相手方に対して訴訟を提起し、その訴訟が係属中になった場合など、具体的な状況によっては、債務者や相手方の自由な処分や履行が制限されることもあります。この条文は、あくまで原則的な取り扱いを示していると理解する必要があります。



例を挙げて説明しましょう。

債権者Aが債務者Bに対して100万円の債権を持っており、債務者Bが第三者Cに対して50万円の貸金債権を持っています。
債権者Aがこの50万円の貸金債権について債権者代位権を行使し、第三者Cに支払いを請求したとします。

この状況でも、債務者Bは第三者Cに対して「やはり私に直接50万円を支払ってほしい」と請求することができますし、第三者Cも債権者Aではなく債務者Bに50万円を支払うことができます。


この場合、第三者Cが債務者Bに支払えば、債務者Bの債権は消滅し、債権者Aは債務者Bから回収することになります。