債権者が債権者代位権を行使するために訴訟を提起した場合に、債務者に対してどのような義務を負うのかを定めた条文です。


この条文のポイントは、**債権者が被代位権利に関する訴訟を起こした場合、速やかに(遅滞なく)、その事実を債務者に知らせなければならない(訴訟告知義務)**ということです。



具体的に見ていきましょう。

  • 債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、
    • これは、債権者が民法第四百二十三条に基づいて、債務者の持っている権利を代わりに行使するために、裁判所に訴訟を起こした場合を指します。
  • 遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。
    • ここが重要な部分です。「訴訟告知」とは、訴訟が提起されたことやその内容を、その訴訟の結果について利害関係を有する第三者に知らせる手続きのことです。この場合、債権者代位権の対象となっている権利は本来債務者のものですから、債務者はその訴訟の結果に大きな影響を受ける可能性があります。そのため、債権者は速やかに債務者に対して訴訟が提起されたことを知らせる義務を負うのです。



この訴訟告知の目的は主に以下の点にあります。

  1. 債務者の防御の機会の確保: 訴訟が提起されたことを債務者に知らせることで、債務者はその訴訟に関与したり、必要な防御策を講じたりする機会を得ることができます。例えば、債務者自身が相手方に対して持っている抗弁を債権者に伝えたり、訴訟に共同して参加したりすることが考えられます。
  2. 訴訟経済: 債務者に訴訟の経緯を知らせることで、債務者が独自に同様の訴訟を提起することを防ぎ、無用な重複訴訟を避けることができます。
  3. 判決の効力の及ぶ範囲の明確化: 訴訟告知を受けた債務者は、その訴訟の判決の効力が及ぶ可能性があります。そのため、事前に訴訟の内容を知っておく必要があります。



もし債権者がこの訴訟告知を怠った場合、債務者はその訴訟の結果について不利益を被る可能性があり、場合によっては債権者に対して損害賠償請求などをすることも考えられます。



例を挙げて説明しましょう。

債権者Aが債務者Bに対して100万円の債権を持っており、債務者Bが第三者Cに対して50万円の貸金債権を持っています。
債権者Aがこの50万円の貸金債権について債権者代位権を行使し、第三者Cを被告として訴訟を提起した場合、債権者Aは速やかにその事実を債務者Bに通知しなければなりません。


この通知を受けた債務者Bは、例えば第三者Cに対して既に一部弁済を受けているといった事情があれば、それを債権者Aに伝え、訴訟における主張に反映させることができます。