登記や登録が必要な財産を譲り受けた人が、譲渡人の持つ登記・登録請求権を行使しない場合に、譲受人自身がその権利を行使できるという特別なケースを定めた条文です。


この条文は、不動産や自動車などのように、登記や登録をしないと権利の移転を第三者に対抗できない財産について、譲受人を保護し、権利関係の安定を図ることを目的としています。




具体的に見ていきましょう。

  • 登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、
    • これは、不動産(土地や建物など)や自動車、船舶などのように、法律の規定によって登記や登録をしないと、その権利の取得や変更を第三者に対して主張できない財産を譲り受けた人を指します。例えば、不動産の売買契約を結んで所有権を取得したものの、まだ自分の名義に登記をしていない買主などが該当します。
  • その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。
    • ここがポイントです。例えば、Aさんから不動産を買い受けたBさん(まだ登記はBさんの名義になっていない)がいたとします。もし、この不動産の登記名義がまだAさんのままになっており、Aさんが第三者Cに対して登記を移転する義務を負っているような場合(例えば、AさんがCさんにも二重に売買契約を結んでいたなど)、Aさんがその登記移転義務を履行しないとき、BさんはAさんがCさんに対して持っているはずの「登記手続をすべきことを請求する権利」を、Bさん自身が代わりに行使できる、ということです。
  • この場合においては、前三条(第四百二十三条の四、第四百二十三条の五、第四百二十三条の六)の規定を準用する。
    • そして、この第四百二十三条の七に基づいて譲受人が譲渡人の権利を行使する場合、前三条、つまり、
      • 第四百二十三条の四(相手方の抗弁): 登記・登録請求の相手方(上記の例ではCさん)は、譲渡人(Aさん)に対して主張できる抗弁を、譲受人(Bさん)に対しても主張できます。
      • 第四百二十三条の五(債務者による処分等): 譲渡人(Aさん)は、譲受人(Bさん)が登記・登録請求権を行使した後でも、その権利を自分で処分したり、相手方(Cさん)に履行させたりすることを妨げられません。相手方(Cさん)も譲渡人(Aさん)に履行することを妨げられません。
      • 第四百二十三条の六(訴訟告知義務): 譲受人(Bさん)が登記・登録請求権の行使について訴訟を提起したときは、遅滞なく、譲渡人(Aさん)に対して訴訟告知をしなければなりません。
    • これらの規定が、このケースにも適用されることになります。



この条文があることで、登記や登録を怠っている譲渡人に代わって、譲受人が自らの権利を守るための行動を取りやすくなります。
特に、二重譲渡のようなケースで、先に譲り受けたにもかかわらず登記をしていなかった譲受人が、登記名義のある第三者に対抗するために重要な役割を果たします。