債務者が財産を処分し、受益者から相当の対価を得ている場合、つまり有償行為における詐害行為取消請求の要件をより厳格に定めた条文です。通常の無償行為(贈与など)に比べて、有償行為の取消しは取引の安全を考慮して慎重に行われるべきという考えに基づいています。



この条文では、以下の三つの要件すべてを満たす場合に限り、債権者はその有償行為について詐害行為取消請求をすることができます。


第一号

  • その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(以下この条において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
    • これは、債務者が財産を処分した結果、その財産が金銭などのように隠したり、無償で他人に与えたり、債権者の権利を害するような処分をしやすくなる状況が実際に生じていることを要求しています。単に財産の種類が変わっただけでなく、「おそれ」が現実的に存在することが必要です。例えば、不動産を売却して現金化した場合、その現金は隠匿や費消が容易になるため、この要件に該当する可能性があります。


第二号

  • 債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
    • 債務者が財産を処分した当時、その対価として得た金銭などを隠したり、無償で与えたりするなど、債権者を害するような処分をする意図を持っていたことが必要です。単に財産を処分しただけでなく、その対価を使って債権者の権利を侵害しようという悪意が債務者にあったことが求められます。


第三号

  • 受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。
    • 財産を譲り受け、相当の対価を支払った受益者が、その行為の当時、債務者が上記のような隠匿等の処分をする意図を持っていたことを知っていたことが必要です。受益者が善意(知らなかった)であれば、原則として詐害行為取消請求はできません(第四百二十四条第一項ただし書の趣旨と同様です)。



このように、第四百二十四条の二は、債務者が相当な対価を得て財産を処分した場合の詐害行為取消請求について、債務者の悪意だけでなく、その行為によって債権者の権利が害される現実的なおそれ、そして受益者の悪意という、より厳しい要件を課すことで、通常の取引の安全に配慮しています。