債務者が既にある債務について担保を提供したり、債務を消滅させる行為(弁済など)をした場合に、債権者が詐害行為取消請求をするための要件を定めた条文です。
これは、特定の債権者に対する偏頗弁済(へんぱべんさい)や担保供与が、他の債権者の利益を害する場合を対象としています。
第一項は、債務者が支払不能の時に行った担保供与や債務消滅行為についての取消請求の要件を定めています。
- 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。
- ここでいう「既存の債務についての担保の供与」とは、例えば、既に借りているお金について、後から担保として不動産などを提供する行為です。「債務の消滅に関する行為」は、例えば、特定の債権者に対してのみ弁済を行う行為などが該当します。
- 一 その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。
- 債務者が、弁済期が来た債務について、一般的かつ継続的に弁済できない状態、つまり支払不能の状況にある時にその行為が行われたことが必要です。
- 二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
- その担保供与や弁済行為が、債務者とそれによって利益を受けた者(受益者、例えば担保を受け取った債権者や弁済を受けた債権者)が共謀して、他の債権者の利益を害する意図をもって行われたことが必要です。単に特定の債権者に優先的に弁済したというだけでは足りず、他の債権者を害するという共通の認識と意図が必要です。
第二項は、債務者の義務に属しない行為や、義務に属する時期ではない行為が、債務者が支払不能になる前三十日以内に行われた場合の取消請求の要件を定めています。
- 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
- ここでいう「債務者の義務に属しない」行為とは、例えば、まだ弁済期が来ていない債務について担保を供与するような行為です。「その時期が債務者の義務に属しない」場合も同様に、本来の弁済期よりも前に弁済を行うようなケースが考えられます。
- 一 その行為が、債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること。
- そのような義務外の行為や時期外れの行為が、債務者が支払不能になる前の比較的短い期間(30日以内)に行われたことが必要です。これは、支払不能が近づいている状況での不当な偏頗行為を問題視する趣旨です。
- 二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
- 第一項と同様に、その行為が債務者と受益者の通謀によって、他の債権者を害する意図をもって行われたことが必要です。
このように、第四百二十四条の三は、債務者の特定の債権者に対する優先的な行為が、他の債権者の利益を不当に害する場合に、その行為を取り消すための要件を厳しく定めています。
特に、支払不能の時期やその直前の行為については、債権者間の公平性を図る観点から、より詳細な規定が置かれています。
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