債権者が受益者に対して詐害行為取消請求をできる場合に、さらにその財産が転々と譲渡された場合(転得者がいる場合)に、どこまで遡って転得者に対して取消請求ができるのかを定めた条文です。



この条文は、転得者の善意・悪意によって、債権者が転得者に対して詐害行為取消請求ができる範囲を限定することで、取引の安全と債権者の保護のバランスを図っています。




具体的に見ていきましょう。

  • 債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。
    • これは、債権者が債務者の詐害行為によって利益を得た最初の受益者に対して取消請求ができる状況で、その受益者がさらに財産を別の人(転得者)に譲渡した場合に、その転得者に対しても取消請求ができるかどうか、という問題を扱っています。


第一号

  • その転得者が受益者から転得した者である場合 その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
    • これは、受益者から直接財産を譲り受けた最初の転得者に対する規定です。この最初の転得者に対して取消請求をするためには、その転得者が財産を譲り受けた当時(転得の当時)、債務者が行った最初の行為(受益者への譲渡など)が債権者を害することを知っていたこと(悪意)が必要です。転得者が善意(知らなかった)であれば、原則として取消請求はできません。


第二号

  • その転得者が他の転得者から転得した者である場合 その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
    • これは、受益者からさらに転得した者(再転得者、そのまた先の転得者など)に対する規定です。このような場合、取消請求をするためには、その最終的な転得者だけでなく、その前に財産を転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者が行った最初の行為が債権者を害することを知っていたこと(全員が悪意)が必要です。一人でも善意の転得者がいれば、それ以降の転得者に対しては取消請求をすることができません。これは、善意の第三者が介在した場合に、その後の取引の安全を優先するためです。



このように、第四百二十四条の五は、転得者がいる場合の詐害行為取消請求の範囲を、転得者の悪意の有無によって厳しく制限しています。
遡れば遡るほど、全員が悪意であることが要求されるため、債権者が最終的な転得者に対して取消請求をすることは一般的に難しくなります。